ジェイフロンティア

ジェイフロンティア（以下、同社）は、ヘルスケア分野を対象にソリューションを提供する企業である。

08年6月にヘルスケア分野におけるインターネット広告代理業として創業し、販売促進支援を行ってきたが、蓄積した販売促進のノウハウをもとに、12年8月に健康食品の自社ブランドの企画、開発、販売を開始した。その結果、健康食品と医薬品の通信販売が主力事業となっている。

さらに、21年2月に開始した医療機関の検索、医師によるオンライン診療の予約及び受診、薬剤師によるオンライン服薬指導、処方薬の宅配サービスをワンストップで提供する医療プラットフォームサービス「SOKUYAKU」が23/5期になって本格的な拡大期を迎えようとしている。

同社の事業は、ヘルスケアセールス事業、メディカルケアセールス事業、ヘルスケアマーケティング事業の3つの報告セグメントに分類されている。

21/5期までは健康食品の通信販売を担うヘルスケアセールス事業が全売上高の約7割を占めていたが、22/5期になると、医療プラットフォーム「SOKUYAKU」と医薬品の通信販売を担うメディカルケアセールス事業の売上構成比が4割を超えるまでに上昇している。

3つの報告セグメントに分類されているものの、事業ポートフォリオとしては、D2C（EC通販）、SOKUYAKU、B2Bの3つに分けられ、同社の事業状況や今後の事業の拡大を見る上では事業ポートフォリオに注目した方が理解しやすい。

報告セグメントと事業ポートフォリオの関係についてはD2Cが2つの報告セグメントにまたがっているために注意が必要だが、D2Cのうち、医薬品が関わるのがメディカルケアセールス事業と区分され、医薬品が関わらないのがヘルスケアセールス事業として区分されている。

（2022年12月16日時点）

現代表取締役社長の中村篤弘氏は、03年頃にクリエイトＳＤホールディングス（3148東証プライム）傘下のクリエイトエス・ディーでドラッグストアの店舗マネジメントに携わっていた。

当時、楽天やAmazonが急拡大してきた時期であり、Eコマースやウェブマーケティングに高い成長可能性を感じた中村氏は、ウェブサービスの業界に身を投じ、POSシステム会社のシーコム（神奈川県横浜市）、インターネット広告代理店のビックタウン（東京都中央区）で経験を積んできた。

その中で、中村氏は、販売促進のためには、単に広告出稿だけでなく、商品開発やシステム構築にも踏み込む必要性を感じるようになっていった。そこで中村氏は、08年6月のモバイルフロンティア（現同社）の設立に参画し、10年6月には代表取締役に就任した。

設立当初、同社はヘルスケア分野に特化した広告代理店であり、担当した商品の拡販で実績を上げていた。しかし、ある程度の拡販に成功すると、顧客は同社のサービスを終えてしまうことが多かった。そのことに広告代理店事業の限界を感じ、同社は自社商品を取り扱うことを志向するようになった。

そこで、同社は、12年8月に自社ブランドの健康食品の公式通販サイト「酵水素328選」を開設し、12年から13年にかけて「酵水素328選」ブランドの商品を次々と投入した。

自社ブランド商品の展開は、健康食品に留まらなかった。11年10月に高度管理医療機器等販売業･貸与業許可の取得を皮切りに、13年4月に化粧品製造販売業許可、同年5月に医薬品販売業許可（卸）、16年11月に医薬品販売業許可（店頭販売）を取得し、化粧品及び医薬品の取り扱いに向けて準備を整えていった。

この医薬品参入の動きの背景は、ゆくゆくは処方箋を必要とする医薬品等の宅配事業に参入するという将来構想への足掛かりを作っていく狙いがあった。

同社は医薬品へ参入した頃から処方箋を必要とする医薬品等の宅配システムの構築を構想してきたが、具体的な動きが見られ始めたのは、19年5月の調剤薬局「健康日本堂調剤薬局 赤坂店」の開設からである。

実店舗を持つことで宅配のノウハウを蓄積しながら、19年5月には、医療用医薬品を薬局店舗から直接配送する顧客サービスプラットフォーム「速薬」アプリの配信を開始した。

大きな転換点となったのは、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い日本初の緊急事態宣言が発出された20年4月に、オンライン診療・服薬指導が初診から解禁となる規制緩和が発令されたことである。

この規制緩和を受けて、電話による服薬指導及び処方箋医薬品の宅配を開始し、21年2月には、病院･薬局の検索、オンライン診療、オンライン服薬指導、薬の宅配をワンストップでカバーする「SOKUYAKU」アプリの配信開始に至った。

こうして、21年8月に東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たした（市場区分の変更に伴い22年4月からはグロース市場に上場）。

（2022年12月16日時点）