6223 東証スタンダード(機械)
西部技研
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事業内容(レポートから抜粋)
デシカント除湿機とVOC濃縮装置等を製造販売
西部技研は、ハニカム成形技術を用いて開発したデシカント除湿機やVOC濃縮装置等を、スウェーデン、中国、アメリカ、ポーランド、韓国、ケニア等の子会社との緊密な連携のもと、約50カ国で販売するグローバルメーカーである。
ハニカム成形技術とは、シート状の素材と波形の素材を交互に積層接着したものであるハニカム積層体を成形する技術であり、積層体の断面が蜂の巣(honeycomb)に似ていることからハニカムと呼ばれている。ハニカム積層体は、空気抵抗が小さく、強度に優れ、表面積が大きいという3つの特徴を持っている。
西部技研のコア技術は、多くの素材をハニカム状に加工できることと、そのハニカムに様々な機能材を添着し、特別な機能を持たせることである。西部技研は、各種製品の心臓部となるハニカムローター(回転体)に西部技独自のコア技術を用いることで、デシカント除湿機やVOC濃縮装置の開発・改良を実現している。
西部技研グループでは、中国子会社や欧米子会社でもデシカント除湿機の組立やVOC濃縮装置のモジュール品の製造は行っているものの、中核部品であるローターの製造は日本だけで行っている。
西部技研の事業領域は空調事業の単一セグメントであるが、製品別には、デシカント除湿機、VOC濃縮装置、その他に分類される。24/12期における製品別売上高構成比は、デシカント除湿機61.3%、VOC濃縮装置29.8%、その他8.8%であった。
一般空調に用いられる除湿には、主に「冷却式」と「デシカント式(吸着式)」の2つの方式があるが、冷却式が空気中の水分を冷却し、結露させて除湿するのに対し、吸着式は湿気を吸湿材に吸着させて除湿している。デシカント除湿機は、シリカゲルやゼオライト等の吸湿剤を用いて、ハニカム内部に湿気を吸着させて除湿しており、低温時や空気中に水分が少ない低露点環境においても効率的に除湿できるという特長を持っている。
デシカント除湿機の用途としては、最終製品の品質維持のため、製造工程で湿度コントロールを必要とする食品・製薬工場や、リチウムイオン電池製造工場、有機EL製造工場、低湿度倉庫、風力発電所等が挙げられる。中でも、近年、需要が急増している車載用電池の製造では、そのほとんどの工程において-40℃露点以下の非常に低湿な環境が求められており、デシカント除湿機の最大の用途となっている。
このような超低湿環境を省エネルギー性も加味して実現するには一般的な冷却式除湿機では実質的には不可能であり、現時点ではデシカント除湿機のみが有効な方式であると認識されている。なお、デシカント除湿機の売上高に占める電池製造工程向けの比率は、21/12期は38%であったが、23/12期には44%に上昇した。24/12期の比率も大きく上昇した模様である。
デシカント除湿機は、ハニカム積層体で作られた除湿ローター、処理空気を送風する処理ファン、再生空気を送風する再生ファン、再生空気を高温にするための再生ヒーターで構成されている。同社は、デシカント除湿機本体を製造販売するだけでなく、ハニカム加工からローター製造、モジュール製造を内製化しているほか、デシカント除湿機を用いたドライルームシステムの設計、設置工事も行っている。製品のライフサイクル期間においては、毎年のメンテナンスや、数年毎に実施されるローター交換工事も行っている。
西部技研グループは、主として、日本、中国、スウェーデン、ポーランドでデシカント除湿機(完成品)を製造し、約50カ国の顧客に販売している。韓国では、西部技研が韓国子会社に供給したローターを用いて韓国の協力会社でモジュール製造を行い、現地顧客に販売している。北米では、これまでは主にスウェーデン子会社が製品を供給していたが、需要拡大に備えて、24年2月には北米子会社のデシカント除湿機組立工場が稼働を開始した。
(2025年4月4日時点)
沿革(レポートから抜粋)
西部技研は、九州大学工学部の研究助手であった隈利實氏が、大学勤務の傍ら、企業からの研究を受託する目的で1962年に設立した隈研究所を前身としている。その後、隈利實氏は、65年に西部技術研究所(現同社)を設立し、72年に商号を変更した。石油ショックを契機に新規事業を模索していた同社は、当時、海外で上市された全熱交換器の自社開発を目指し、研究に取り組んだところ、74年に同社の根幹技術となるハニカム成形技術の確立に成功し、全熱交換器を商品化した。
西部技研は、79年に本社工場を建設したことで、研究受託企業から脱皮し、自社製品の製造販売に乗り出した。84年4月には活性シリカハニカム除湿ローター「SSCR」とSSCRを用いたデシカント除湿機を商品化した。
西部技研は、85年に、デシカント除湿機メーカーであったスウェーデンのDST Sorptionsteknik ABと業務提携契約を締結し、ヨーロッパでのハニカムローターの販売を本格的に開始した。88年1月には、世界初のゼオライト式VOC濃縮ローター「SZCR」とVOC濃縮装置モジュールを商品化した。93年には、DST Sorptionsteknik ABの全株式を取得し、商号をSeibu Giken DST AB(以下、SG DST)に変更した。SG DSTは、現在、デシカント除湿機の製造販売とVOC濃縮装置の販売を担っている。
西部技研は、01年にアメリカにSeibu Giken America, Inc.(VOC濃縮装置の販売、全熱交換器の製造販売)を設立した。07年には中国子会社(VOC濃縮装置の製造販売、全熱交換器の製造販売)を設立した。09年にはSG DSTが中国子会社(同社の孫会社、デシカント除湿機の製造販売)を設立した。SG DSTは、12年にはアメリカ(デシカント除湿機の販売)に、13年にはポーランド(デシカント除湿機の製造販売)に、17年にはケニア(デシカント除湿機の販売)に、各々子会社(同社の孫会社)を設立している。また、19年には西部技研が韓国子会社を設立した。
23年10月、西部技研は東京証券取引所スタンダード市場に上場した。24年4月には、農業ハウス栽培向けに大気中の二酸化炭素を濃縮、供給する装置である「C-SAVE Green○R」の販売を開始した。
(2024年9月6日時点)