4894 東証グロース(医薬品)
クオリプス
企業情報
新規上場会社紹介レポート
事業内容(レポートから抜粋)
ヒトiPS細胞由来の再生医療等製品の開発と製造開発受託事業を展開
クオリプスは、心臓移植手術等に実績のある大阪大学大学院の澤芳樹教授(現名誉教授、同社取締役最高技術責任者)らにより、京都大学の山中伸弥教授(現京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授)との共同研究の成果と大阪大学の技術とノウハウを基に、重症心不全の治療を目的とする、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シート(以下、心筋細胞シート)の事業化のために17年3月に設立されたバイオベンチャーである。
20年8月には心筋細胞シート作製のための細胞大量培養技術等のノウハウを活用した、ラボ一体型の商業用細胞培養加工施設CLiC-1を稼働させ、バイオベンチャー等向けに再生医療製品等の製造開発受託事業を行っている。
心筋細胞シートは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞を主成分とする他家細胞治療法であり、シート状に加工された心筋細胞を患者の心臓に移植する。心臓移植や補助人工心臓の装着までには悪化していない重症心不全患者を対象とする治療薬である。
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)でストックしているヒトiPS細胞の提供を受け、同社で心筋細胞に分化誘導し、未分化のiPS細胞を除去する精製加工を行って、心筋細胞シートを作製する。この心筋細胞シートを患者の心臓に直接貼付する。
心筋細胞シートの重症心不全への作用メカニズムは、心筋細胞シートから産生された因子が、心筋梗塞を起こした部位のまわりの血管新生を促進し、梗塞部位の修復に寄与すること、及び心筋細胞シートが移植後に患者の心臓と機能的・電気的に結合し、患者の心臓と同期して収縮弛緩することで、患者の心臓機能をサポートすること等と推定されている。
重症心不全患者に対する細胞治療法としては、患者自身の大腿部の骨格筋芽細胞を培養して移植する自家細胞療法もある。
他家細胞を使う心筋細胞シートの自家細胞療法に対するメリットとしては、
①患者の細胞を採取する必要がなく、患者の負担が小さい。
②自家細胞療法では、採取した患者の細胞を培養するのに時間がかかるのに対し、心筋細胞シートではストックされたiPS細胞を基に、細胞培養施設で心筋細胞を培養して保管することができる。
③他家細胞移植であるため、自家細胞移植に比べ多くの患者を対象にすることができる
等が挙げられる。
デメリットとしては、他家移植の場合、患者の免疫機能による拒絶反応が生じるため、移植後一定期間は免疫抑制剤の投与が必要になり、その間、患者の免疫力が低下して疾病に罹患するリスクが高まること等が挙げられる。
(2023年6月30日時点)